CBTのアクセシビリティを情報公開請求から調べる

学校教育のデジタル化が進んでいます。

デジタル教科書については、視覚障害・発達障害などのある児童生徒が利用できるようにするためのアクセシビリティが、以前から重要な課題として取り上げられてきました。文字の大きさや色、フォント、読み上げなどの機能についても検討され、デジタル教科書のアクセシビリティが新聞等で報道されることもあります。

一方、学校ではCBT(Computer Based Testing)の利用も進んでいます。もっとも広く使われているのは文部科学省のMEXCBTです。全国学力・学習状況調査だけではなく、地方自治体の学力・学習状況調査でも、ふだんのテストでもMEXCBTは使われるようになりました。

それでは、デジタル教科書で課題とされてきたアクセシビリティは、CBTではどのように扱われているのでしょうか。この疑問から、私たちはCBTのアクセシビリティについて情報公開請求による調査を始めました。本ページでは、その調査によってこれまでに分かったことと、個別の情報公開請求・分析結果をまとめます。

なぜ情報公開請求を行ったのか

CBTのアクセシビリティを外部から調べることには困難です。例えば、MEXCBTは学校外から使えるようにはなっていません。

たとえ、CBTの動作デモを見たところで、アクセシビリティについてはほとんど何も分かりません。フォントは変えられるのか、背景色・文字色・ルビ色は設定できるのか、行間は広げられるのか、文字の拡大・縮小が可能なのか、アクセシビリティのために必要なことは多々あります。これらは、今日のデジタル教科書では実現されつつある機能です。

これらを実現するには、CBTシステムにアクセシビリティ機能が必要ですし、CBT問題(コンテンツ)もアクセシビリティ対応になっている必要があります。

そこで、主として次の二つの方向から情報公開請求を行いました。

  1. 実際のCBT問題を構成する電子データを入手して調べる
  2. CBTシステムのアクセシビリティ機能について、どのような検討が行われたのかを行政文書から調べる

CBT問題については、画面を印刷・撮影したPDFではなく、実際に問題を構成しているQTI XML文書、画像、スタイルシート等の電子データを請求しています。

これによって、受検者に提示される文字のうち、どれだけがテキストとして格納され、どれだけが画像の一部として格納されているのかなどを調べることができます。

文字が画像になっていると何が問題なのか

CBTの画面では同じ文字に見えても、その内部表現には大きな違いがあります。文字がテキストとして格納されていれば、読み上げ、文字サイズやフォントの変更、文字色・背景色の変更、行間や字間の調整、リフローなどが利用できます(後述するようにCBTシステムのサポートは必要です)。

一方、文字を画像の一部として表示すると、こうした変更や支援技術による利用ができません。画像に代替テキストがあっても、画像中の個々の文字の表示を利用者に合わせて変更できるようになるわけではありません。

本調査では、CBT問題中の文字を次の二つに分けました。

  • テキスト文字: QTI XML文書等に文字データとして格納されている文字
  • 画像化文字:画像の一部として格納されている文字

文字の画像化率は、次の式で求めています。

画像化文字数÷(テキスト文字数+画像化文字数)画像化文字数 ÷(テキスト文字数 + 画像化文字数)

画像化率が高いことだけで、個々の画像が直ちにWCAG違反であると断定することはできません。図表、地図、写真など、文字を含む画像を使用することが合理的な場合もあります。しかし、問題文や選択肢を含む大量の文字を画像として提示することは、文字は可能な限り画像ではなくテキストとして提供するというWCAG 2.2の達成基準1.4.5「文字画像」の趣旨と整合しません。

地方自治体のCBT問題を調べた結果

北海道、京都府、埼玉県、千葉県に対して、それぞれが保有するMEXCBT問題の電子データを情報公開請求しました。ただし、調査対象、開示方法、現在までに得られた情報は同一ではありません。

対象開示されたもの・現在の状況これまでに確認できたこと
北海道「ほっかいどうチャレンジテスト」QTI XML文書、画像等の電子データを取得すべての問題を通算した文字画像化率は40.2%、半数の問題での文字画像化率は43.3%以上
京都府学力・学習状況調査QTI XML文書、画像等を取得。審査請求後、画像ごとの文字数も取得。すべての問題を通算した文字画像化率は68.8%、半数の問題での文字画像化率は53%以上
埼玉県学力・学習状況調査当初はPDFのみ。その後QTI XML文書、画像、CSS、JavaScript等を取得。画像ごとの画像化文字数が示されておらず、画像化率の集計は未完了
「ちばっ子チャレンジ100」QTI XML文書、画像等の電子データを取得全問題を通算した文字画像化率は約20%、半数以上の問題での文字画像化率は0%。

北海道――文字の40.2%が画像化

北海道教育委員会から、MEXCBTに搭載された「ほっかいどうチャレンジテスト」のQTI XML文書、画像等を取得しました。開示されたデータを調べると、問題文や選択肢などに使われる文字の相当部分が画像に含まれていました。

個々の問題について、テキスト文字数、画像化文字数、画像へのリンク等を一覧にした分析結果を公開します。これにより、集計値だけでなく、どの問題のどの画像に文字が含まれているかを確認できます。

リンク: 北海道「ほっかいどうチャレンジテスト」の情報公開と分析結果

京都府――文字の68.8%が画像化

京都府教育委員会から、2025年の京都府学力・学習状況調査で使用された、小学校第4学年から中学校第3学年までの国語、算数・数学、英語のCBT問題を取得しました。

問題文や選択肢などの文字は、内容を非公開にするため一文字ごとに黒四角(■)へ置き換えられていました。このため、内容を公開せずにテキスト文字数を数えることができます。画像中の文字は黒く塗りつぶされていましたが、当初は、その文字数が示されませんでした。そこで審査請求を行い、2026年4月24日に画像ごとの文字数を記載した資料を受領しました。

427問題を分析した結果は次のとおりです。

項目結果
文字の総数293,564文字
画像化文字数202,110文字
全問題を通算した文字画像化率68.8%
問題ごとの文字画像化率の中央値53%

科目別の画像化率は、国語76.7%、算数・数学52.6%、英語61.5%でした。

リンク: 京都府学力・学習状況調査CBT問題の情報公開と文字の画像化状況

埼玉県――電子データは得たが、画像内文字数は未開示

埼玉県には、2025年の埼玉県学力・学習状況調査で使用されたCBT問題の電子データを請求しました。請求時には、問題内容を非公開とする場合、XML文書中の文字を黒四角(■)に置き換え、画像中の文字を黒く塗りつぶしてもよいが、塗りつぶした文字数は分かるようにすることを明記しました。

当初開示されたのはPDFでした。その後、QTI XML文書、画像、スタイルシート、JavaScript等の電子データがCD-Rで交付されました。しかし、画像中で非公開とされた文字の文字数は示されませんでした。

テキスト文字数はQTI XML文書から数えられますが、画像化文字数が不明なため、京都府と同じ方法で文字画像化率を算出することはできません。この点について、画像ごとの文字数の開示を求めています。

リンク: 埼玉県学力・学習状況調査CBT問題の情報公開

千葉県――文字の約20%が画像化

「ちばっ子チャレンジ100」のうちMEXCBTに搭載された問題について、文部科学省からQTI XML文書、画像等を取得しました。

全問題を通算すると、文字総数211,217文字のうち42,954文字が画像化されており、画像化率は約20%でした。一方、問題ごとの画像化率の中央値は0%でした。文字をほとんど画像化していない問題が多い一方で、画像化率が90%以上の問題もありました。

この結果は、MEXCBTというシステムを使えば必然的に文字が画像化されるわけではないことも示しています。同じ仕組みの上でも、問題の作り方によって画像化の程度は大きく異なります。

リンク: 千葉県「ちばっ子チャレンジ100」の情報公開と文字の画像化状況

全国学力・学習状況調査のCBT問題

国立教育政策研究所(NIER)等に対しては、全国学力・学習状況調査のCBT問題について三つの情報公開請求を行いました。

対象現在の状況
2025年度中学校理科CBT問題部分開示決定。非公開問題等について審査請求中
2025・2026年度CBTサンプル問題全部開示決定。電子データそのものを交付する方法に変更されたが、開示実施手数料について審査請求中
2026年度全国学力・学習状況調査CBT問題部分開示決定。中学校英語の非公開問題と開示実施手数料について審査請求

2025・2026年度のサンプル問題については、872ファイルを基礎として、CD-Rによる開示実施手数料182,920円が示されました。2026年度の本番問題では901ファイルを基礎として189,010円が示されています。

これに対し、地方のMEXCBT問題について示された手数料は、北海道730円、京都府220円、埼玉県490円でした。文部科学省が開示した「ちばっ子チャレンジ100」は29,830円でしたが、こちらではMEXCBTが管理・交付に使用するZIPファイルを単位として算定されていました。

NIERの算定では、ZIPファイル内のXML文書、画像、スタイルシート等を個別のファイルとして数えたため、18万円を超える手数料になったと考えられます。私たちは、MEXCBTが実際に管理するZIPファイルを単位として交付し、手数料を再計算するよう求めています。

また、次回以降の調査で再利用する可能性がある問題については、問題内容を公開することではなく、内容を秘匿したままアクセシビリティを検証できる形での部分開示を求めています。京都府で行われたように、XML文書中の文字を黒四角に置き換え、画像中の文字を黒塗りし、その文字数を示す方法であれば、問題内容を明らかにせずに文字画像化率やXML構造を検証できます。

2026年8月30日現在、全国学力・学習状況調査については、分析に使用できる電子データをまだ取得していません。このため、地方自治体の問題について行ったような文字画像化率の分析には至っていません。

リンク: 全国学力・学習状況調査CBT問題の情報公開請求について

MEXCBTのアクセシビリティ機能についての開示請求

CBT問題そのものとは別に、全国学力・学習状況調査のMEXCBTについて、アクセシビリティ機能の有無、仕様、必要とする受検者の把握、実装・非実装の判断、専門的検討、デジタル教科書との比較、代替措置等を示す行政文書を請求しました。

結果を、文部科学省がデジタル教科書について示している内容と並べると、次のようになります。

項目全国学力調査MEXCBTについての開示結果デジタル教科書について文部科学省が示していること
字間・行間の変更機能も代替措置もなく、専門的検討・比較も実施していないとして、文書不存在による不開示2011年の実証研究は字間・行間を個人の特性やニーズに応じて変更・調整する有効性に言及。2023年標準仕様書は行間変更機能を明記
文字色・背景色・ルビ色の変更機能も代替措置もなく、専門的検討・比較も実施していないとして、文書不存在による不開示2023年標準仕様書は文字色・背景色の変更機能を明記
読み上げ・読み上げ箇所のハイライト機能も代替措置もなく、専門的検討・比較も実施していないとして、文書不存在による不開示2023年標準仕様書は音声読み上げ機能を明記
文字拡大「拡大文字問題プログラム」等に関する文書を開示。端末側のアクセシビリティ機能がどの程度使えるかは各学校で確認するよう求めている2011年の実証研究は文字サイズ調整の有効性に言及。2023年標準仕様書は紙面の拡大・縮小と文字の大きさの変更をそれぞれ明記
フォント変更フォント変更の記述がない概要資料を開示。適切な文書の特定と開示を求めて審査請求中2023年標準仕様書は文字の書体変更機能を明記
キーボードのみの操作JIS X 8341-3:2016のキーボード操作可能性を要件としていることを示す文書、およびキーボードだけで利用できることを確認・検証した文書を作成・取得しておらず、保有していないとして不開示開示請求は学習者用デジタル教科書も対象としていたがこちらも非開示

字間・行間、配色、読み上げ・ハイライトについて使われた「当該機能およびその代替措置が無く、専門的検討・比較も実施していない」という表現は、私たちによる評価ではなく、文部科学省の不開示決定通知書に記載された理由です。

文字拡大については、共通の問題を利用者が調整するのではなく、通常版とは別の「拡大文字問題プログラム」が用意されています。文部科学省の資料は、音声読み上げ、ピンチ操作、反転・リフロー表示、フォント・コントラスト変更等の端末側機能を利用することも挙げていますが、それらがどの程度使えるかをサンプル問題によって各学校で確認するよう求めています。また、問題文を画像データで示す設問など、これらの機能に対応できない設問もあると明記しています。

リンク: 全国学力・学習状況調査CBTのアクセシビリティについて情報公開請求で分かったこと

二つの調査結果はつながっている

CBTシステムにアクセシビリティ機能があっても、問題文や選択肢が画像になっていれば、その文字を読み上げたり、フォント、文字サイズ、配色、行間等を変更したりすることは困難です。逆に、問題が適切なテキストで作られていても、それを利用するための機能や支援技術との連携がなければ、児童生徒の必要に応じた提示はできません。

今回の調査では、地方自治体の実際のCBT問題で大量の文字が画像化されていることが確認されました。それと同時に、全国学力調査のMEXCBTについて、複数のアクセシビリティ機能も代替措置もなく、専門的検討・比較も実施していないとする文部科学省の回答が得られました。

さらに、全国学力・学習状況調査の問題データについては、18万円を超える開示実施手数料が示されており、外部から実際の問題を検証すること自体が困難な状態です。

したがって、明らかになったのは、一つの機能の不足だけではありません。

  • CBT問題の作り方によって、文字サイズ、フォント、配色、行間、読み上げ等の利用が妨げられている
  • MEXCBTの基本的なアクセシビリティ機能について、検討・比較を行った行政文書が確認できない
  • 通常版を利用者に合わせて調整するのではなく、拡大文字版やルビ振り版という別の問題を用意する方式が採られている
  • 全国学力調査の問題を第三者が検証しようとすると、高額な開示実施手数料が求められる

これらは、CBTのコンテンツ、システム、配慮の方法、検証可能性にまたがる問題です。

今後の調査

全国学力・学習状況調査のCBT問題については、引き続き審査請求を進め、分析可能な電子データの取得を求めます。取得できた場合には、地方自治体の問題と同じ方法で、テキスト文字数、画像化文字数、代替テキスト等を調査し、公開します。

また、CBTには文字の提示以外にも、キーボード操作、ドラッグ操作、フォーカス、入力方法などの問題があります。WCAG 2.2で追加された要件を反映したJIS X 8341-3の改正後には、その規格に基づく要件化・検証が行われているかについても調査する予定です。

本調査で公開するのは、情報公開請求によって得た行政文書、CBT問題の電子データから機械的に集計した結果です。

個別の調査記事

  1. 京都府学力・学習状況調査CBT問題の情報公開と文字の画像化状況
  2. 北海道「ほっかいどうチャレンジテスト」CBT問題の情報公開と文字の画像化状況
  3. 千葉県「ちばっ子チャレンジ100」CBT問題の情報公開と文字の画像化状況
  4. 埼玉県学力・学習状況調査CBT問題の情報公開
  5. 全国学力・学習状況調査CBT問題の情報公開
  6. 全国学力・学習状況調査CBTのアクセシビリティについて情報公開請求で分かったこと